雪山の知識

まずは雪を知ること。

圧雪されたスキー場しか行ったことがないのでは雪を知っているとはいえません。

くどくど説明するより、まずはスキー場から野外に歩いて出てみましょう。

1月、2月、3月と時期によってまったく雪は性質が違ったものになります。

また、雪の状態は時間(気温)によっても激変します。同じ場所でも雪の状態によって通れたり通れなかったりします。ゆえに雪山は10年通ってもベテランとはいえないのです。

雪の性質

雪はフカフカ状態では90%が空気であり、自重や風圧などでしまると断熱材のようになり、氷とちがってなかなか溶けません。雪を溶かして水を作るには呼び水を多めに加え、(むしろ、お湯に雪を加えていく方が効率的です。)スプーンで雪をつぶして空気を追い出すようにします。とけると体積が10分の1になるので、雪と燃料を充分に用意すること。(雪洞内なら水作りがやりやすいです。)なお、残雪期ではゴミだらけ(ハンカチでこします。)で濁った水しか得られないことが多い。

フカフカ雪の急斜面を登る場合は、一度軽く踏んでから少し待って焼結させてから再荷重すると体重をささえてくれます。あせらずのんびりやった方が勝ちです。

危険について

ドカ雪直後の小規模な表層雪崩ならどこでもおこります。よく雪崩が恐いといわれますが、通い慣れた人なら、致命的な規模のものについては起こりそうな時刻と場所はさっしがつくので、避けてルートをとれば、まきこまれることはありません。

危険なのは、稜線から風下の空中に はりだす雪庇(せっぴ)です。雪は風に吹かれると様々な形になり、通い慣れた人でも雪庇が見抜けず、踏み抜いて滑落する事故があとをたちません。

高山では滑落すると、たとえ簡斜面であっても雪面は氷の滑り台になっていることが多く、恐ろしいスピードになって岩や木にたたきつけられてしまいます。(風の吹きさらしになっている雪面ではフカフカ雪でソフトに止まれることは期待できません。)

雪洞作り

規模にもよりますが、作るのにかなりの体力と時間(最低でも約1時間をみてください。)がかかるうえ、作業時にカッパがないとずぶ濡れになります。また、雪崩がない所で、雪が豊富にあり、適度な締まり具合であることなど条件がいろいろあり、初心者はどこに作ればよいのかわかりません。しかも、決まった作り方もなく、人それぞれです。(私の場合は斜め上にラッキョ型に掘り、レジャーシートで排雪しています。下記参照。)雪の状態によっても手間が違うので、雪洞作りはとにかく経験を積んでいくしか習得する術はありません。

雪洞の性質

雪洞内は外気がマイナス何度であろうと断熱されて、“人いきれ”によりだいたい−4℃くらいです。−4℃ならふつうの防寒具でもなんとか耐えられますが、雪は溶けるとき熱を吸収するので、雪洞内でコンロをたいても−4℃のままで暖まりません。雪洞内にテント(ツェルト)をはって、その中でコンロをたくと初めて暖まれます。

雪洞の実態

林では上から枝に積もった雪が落ちても壊れますし、夜中に風向きが変わって屋根雪が飛ばされたり、吹きだまりになって埋没したりもするので、高山の−20℃の世界で 何日も吹雪で停滞させられる場合など、かなりのエキスパートレベルでない限り、その必要性をせまられることはあまりないと思います。(疲労困這状態になってからでは作れないので、作るべきか作らざるべきかエキスパートでも行動予定にそった計画的な判断をしないといけません。)通常、ちゃんとした装備(シュラフなど)があるならドーム型テントの方が状況に対処しやすくて便利でしょう。雪洞は上記のリスクはあっても、風にあおられ外気温と同じなテントに比べ、燃料の節約ができ、快適でしかも風情があるので、そこなら作れることがあらかじめわかっている場合では、必要でなくても遊びで作られることが実際は多いです。

なお、実践的なのは半雪洞です。これは雪を途中まで掘って風よけしてツェルトをはるもので、雪山でのビバークではお決まりの露営方です。軽量化でわざとドームテントとシュラフをオミットして、ツェルトの半雪洞とシュラフカバーだけで雪山山行しているアルパイン型速攻スタイルの人は多いと思います。

 

雪洞(藤本流です。)

     必要な道具。(雪をかぶるので、カッパを着こんでフード、オーバーグローブもします。アイゼンははずしてください。)

軽くてコンパクトなスコップ。柄が短く(長いと中でつかえる。)、シャベルの大きいものが労力が少なくてベスト。

(チャチなスコップではかなり疲れます。やはり高価でも雪山用がいいです。)

やぶれにくく、1.5m四方くらいの惜しげのないレジャーシート。排雪するのに使い、最後はドアになります。(ツェルトは惜しい。)

あと天井を仕上げる時、ピッケルのブレードやコッヘルを使うこともあります。

     掘る場所。

(雪が少なそうに思えても、あるところにはタップリあります。)

雪庇(または雪庇めいたもの)をさがす。(風下の吹き溜まりを捜すには雪庇が目印。)

雪崩の跡(デブリ)がないかチェックする。(雪崩は決まった場所で定期的におきる。)

雪庇が小さい または切れる様子なく安全なものなら、その下が垂直で一番掘りやすい

雪庇が危険そうなら、巻き込まれないように横隣に掘る。

掘る地点まで稜線から降りていくのがたいていの場合 急斜面で危険なので注意すること。

上記以外の場所では入口が本当に風下であるかをチェックする必要あり。

     掘り方。

本によくある竪穴型は排雪が大変で、寒くてほとんど無意味です。(これならツェルト併用の半雪洞の方がいいです。)

横穴型を掘ること。(はじめは掘りにくくても奥の方は掘りやすいものです。)

斜面に足場を踏み固めたら、必ず斜め上方向に掘るように意識してラッキョ型(1、2人用)に掘る。

(スコップが2本あって3人以上なら2つ掘って中でつなげて、片方の入口をふさぐと早くてラクです。)

できるだけガリガリ削らず、ブロック状に切り出すようにした方がラクで、下にレジャーシートを敷いておくと、ブロック状の排雪はひっかからず傾斜で外に滑り落ちるのでホイホイ投げ出せて作業がすごくラクです。(排雪は先にシートをセットしてから行うこと。)

よくやる失敗として:下方向に掘る。(排雪が大変で、一人では無理な作業になる。オマケに入口が壊れて大きくなってしまいます。)

仕上げに、水滴防止に天井をドーム型に削って滑らかにし、ランタン棚などつくって、最後に床を平らにする。

シートを入口につける。(上の端を巻き込むように雪で押さえ、下はスコップでおさえる。)

換気と外のチェックを定期的にする

コンロやランタンはベニヤ板などの上に置くと転倒防止できる。

パッキングを工夫してザックの上に座れるようにしておくと尻が冷たくなくて快適。(寝泊りするならマットが大事です。)

 

 

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